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内外問わず話題作・娯楽作を本音で紹介
笠井 信輔
フリーアナウンサー
ぼくが生きてる、ふたつの世界
24/9/20(金)
新宿ピカデリー
呉美保監督の9年ぶりの長編は、耳が不自由な親元で育つ子ども、「コーダ」の物語。しかも「自分が犠牲になろう」と言う、かのアカデミー賞映画のヒロインとは違い「耳の不自由な親の犠牲になってきた」との思いから抜け出せない息子の日々を描く。 吉沢亮は主人公である息子を中学生時代から演じるが、その葛藤や苦悩、自然な手話は賞レースに絡むだろう名演だ。親と思春期の子との間でコミュニケーションが取れないのは健常者でもいえること。 観客はきっと気づく。「あなたは目と目を合わせて話をしていますか?」という本作のテーマに。 主人公が「自分が不幸であったと感じていた世界は、実は幸せな世界だったのではないか」と気づいた瞬間、私も思わず涙した。
24/9/23(月)