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水先案内人のおすすめ

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柔軟な感性でアート系作品をセレクト

恩田 泰子

映画記者(読売新聞)

ぼくのお日さま

冬。どこか地方の町。なんだか気の晴れない日々を送っている男の子が、フィギュアスケートに打ち込む女の子に心奪われ、自己流で練習を始める。一生懸命な彼を、女の子のコーチは応援し始める。そして回り始めた3人での時間の行方をこの映画は追いかけていくのだが、とにかく、映像の強度が尋常ではない男の子が女の子に見た光。コーチが男の子に見た光。そして、女の子のコーチに対する気持ち。言葉にすればこぼれ落ちてしまうもの、心のひだにはさまっているものを、この映画は、凝視させ、感じ取らせる。微妙なバランスのもとに成り立っている3人の時間が、いつ崩れてしまうのか、どきどきはらはらさせられ、引き込まれる。 氷上のシーンは、眼福。みんな、ちゃんと滑れる。コーチ役の池松壮亮の身体能力には驚嘆。奥山大史監督による、俳優たちと一緒に踊っているようなカメラワークに、これまた驚嘆。ストーリーそのものには、正直言って物足りなさを感じてしまうのだけれど、過剰に劇的な要素を加えられるよりはそっけないくらいのほうが、日常に潜む真正の光、その短くも強い輝きをとらえたこの映画には似合っている。

24/9/3(火)

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