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日本映画の新たな才能にフォーカス

イソガイマサト

フリーライター

顔さんの仕事

日本の都市部の映画館ではいまはほとんど見ることがなくなった、映画の大きな看板。専門の絵師がポスターなどを参考に描いたそれらはとても味わいがあって、俳優の顔が全然似ていないどこかユーモラスな絵を見てクスッと笑ったことがある人もたぶん少なくないはずだ。 『アイコ十六歳』(83)、『釜石ラーメン物語』(22)などの今関あきよし監督による本作は、台湾に魅せられ、台湾の食にスポットを当てた『恋恋豆花』(19)も発表している同監督が、台湾の伝説の映画看板絵師・顔振発(イェン・ヂェンファ)の仕事と生き様に迫ったドキュメンタリー。『グリーン・デスティニー』のアン・リー監督も若いころに通っていた台南の老舗映画館「全美戯院」の看板を、18歳から50年にわたって描き続け、2024年、御年71歳で台北電影奨・卓越貢献賞に輝いた顔振発。映画は、そんな彼が『THE FIRST SLAM DUNK』の看板を描き始めるところから映画館に設置するまでの4日を追い続けるが、使用済みのスパイダーマンの絵の上に1本の同じ筆で湘北高校のバスケ部の面々を描き出すその大胆な手さばきはまさに神業! 今関監督の8ミリ映画の傑作『ORANGING’79』(79)のヒロインでもある、イラストレーターの三留まゆみのナビゲートも的確で分かりやすくて、彼女のインタビューで顔さんの優しく温かな人柄も静かに浮かび上がる。そして、懐かしい気分に浸りながら映画館を出るころには、きっと、今日も「全美戯院」の真向かいの仕事場で絵を描いている顔さんに会いに行きたくなっているに違いない。ちなみに、「全美戯院」はいまでは顔さんの絵を見るためにたくさんの人が訪れる観光スポット。藤井道人監督の『青春 18✕2 君へと続く道』(24)の撮影にも使われた映画の聖地でもあるのだ。

24/9/3(火)

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