評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
ドキュメンタリー評論のエキスパート
村山 匡一郎
映画評論家
あなたのおみとり
24/9/14(土)
ポレポレ東中野
歳をとるにつれ、近親者の末期を迎える機会が増えてくる。そんな身内の臨終を見守ったドキュメンタリーだ。『東京干潟』や『蟹の惑星』などで知られる村上浩康監督の父は難病で入院していたが、母が自宅で看取ることを決めた。村上監督はそれから1ケ月余に父が亡くなるまでの最後の“おみとり”を記録する。訪問介護やヘルパーに支えられながら、母が介護する姿が描かれるが、介護は想像する以上にたいへんな務めである。昼も夜も、気を張りつめる。そんな母が介護する日常をカメラは優しく見守るが、たとえば母が元教師の父に小学唱歌を歌って聞かせるように、その姿には、ふたりがともに歩んできた人生が凝縮されているようで心に響く。近親者の死はもっとも素直な心と姿を浮き彫りにする瞬間かもしれない。
24/9/12(木)