水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

見逃せない、ちいさな芝居を中心に

釣木 文恵

演劇ライター

ヨーロッパ企画『来てけつかるべき新世界』

2017年の岸田國士戯曲賞を受賞した今作は、大阪・新世界に店を構える串カツ屋の娘と、彼女を取り囲む街の人びとのようすを描く人情喜劇。藤谷理子さん演じるマナツの雰囲気といい、章立ての構成といい、NHKの朝ドラを思わせるテイスト。舞台設定にもキャラクターにも昭和感が溢れているのに、そのお皿にはなぜか、SF要素もてんこもりに乗っかっているのです。 2016年の初演から8年経って、当時では考えられないほどAIが身近な存在になっています。ドローンもロボットもメタバースだって、はるか未来の非日常というわけではなくなり、シンギュラリティという単語もよく聞くようになりました。初演を観たときは新世界のおっちゃんおばちゃんたちと「新世界」の技術やシステムとのギャップに笑っていましたが、いま観るとまた違った感慨を抱くのかもしれません。2024年の「新世界」はどんな姿を見せてくれるんでしょう。

24/9/13(金)

アプリで読む