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水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
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アニメも含め時代を象徴する映画を紹介

堀 晃和

ライター(元産経新聞)、編集者

まる

『まる』という平仮名の簡潔なタイトルに強く惹かれた。いったい、どんな話なんだ?と。 無気力な雰囲気を漂わせる美大卒の沢田(堂本剛)は、人気現代美術家(吉田鋼太郎)の工房でアシスタントとして淡々と日々を送っていた。しかし、腕を怪我し、職場を追われてしまう。古いビルの自室に戻り、何気なく絵筆で描いた円が世間の注目を浴び、時代を担う新鋭アーティストとして認識されるが……。 図形の丸(円相)を巡る不思議な展開がユニークだが、何と言っても登場人物の描かれ方が興味深い。沢田の周囲に集う面々が特徴的だ。画廊の女主人(小林聡美)、公園で出会った謎のおじさん(柄本明)、突然訪ねてきたアートディーラー(早乙女太一)……。一癖も二癖もある人物たちの「自己中心的な性質」が、表情や感情の起伏を抑えた堂本の演技で一層際立つ。 ツボを押されたのが、沢田の隣室の売れない漫画家(綾野剛)だ。粗雑な印象だが、繊細で沢田の才能への嫉妬を隠さない。とっつきにくそうで人懐っこい。私的な事柄で恐縮だが、学生時代の下宿を思い出した。階下に住んでいた自称漫画家の無頼な姿と重なって、懐かしさが込み上げた。ロケ場所の横浜の街の空気感も好きだ。

24/10/15(火)

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