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映画のうんちく、バックボーンにも着目

植草 信和

フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

ベルナデット 最強のファーストレディ

第22代フランス大統領ジャック・シラク(在任1995年~2007年)は、来日回数40数回を数える親日家として知られていた。彼は日本文化の熱烈な支持者で、なかでも愛犬に「スモウ」と名付けたほどの相撲ファンだった。本作『ベルナデット 最強のファーストレディ』はそんな風変わりなフランス大統領だったシラクの妻ベルナデットを主人公にしたヒューマン・コメディ。 ベルナデットを演じるのは、世界的大女優、フランスの至宝といわれているカトリーヌ・ドヌーヴ。夫を大統領にするため常に影で働いてきたベルナデットはその甲斐あって、ようやく大統領府であるエリゼ宮入りする。そこでファーストレディに見合う仕事と場所を得られると思いきや、夫や広報アシスタントを務める娘から「時代遅れ」「メディアに不向き」と蚊帳の外に追われてしまう。怒り心頭のベルナデットは、「メディアの最重要人物になる」という”復讐計画”をスタートさせる、というお話。 夫につくす「影の女」から「最強のファーストレディ」に変貌していくフランス女性を、81歳、女優歴67年のカトリーヌ・ドヌーヴが貫録たっぷりに演じているのが最大の見どころ。『シェルブールの雨傘』『昼顔』で世界を魅了した美貌に衰えはあるが、堂々たる体躯と抜群のコメディセンスで「ファーストレディ」の存在感を体現している。年齢に応じた役どころをこなしていく、女優人生の見事な転変。さすが大女優と、喝采を送るしかない。 監督・脚本(共作)を手掛けたのは新進女性監督レア・ドムナック。今年41歳を迎えた彼女は、「50代以上の女性が主役の作品を手掛けることができて嬉しかった」と語っている。新内閣に女性がたったふたりしか入閣していない男性優位国の後進性を恥じいらずにはいられない、フランス発の堂々たる「女性映画」だ。

24/10/18(金)

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