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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

アイミタガイ

ともかく、黒木華の映画である。 黒木は、ときにエキセントリックな面を見せる役がうまいが、この映画では、ちょっと家庭環境に暗い過去を持つものの、見かけは平凡な、働く女性を、ナチュラルに演じている。そればかりか、エンドロールで流れる曲まで歌っている。 タイトルの「アイミタガイ」は「相身互い」だが、現在では死語に近いようだ。作中でその漢字と意味が、祖母から説明される。 原作は5つの短編からなる連作で、バラバラに見えた話が、どこかでつながっている構成。ある短編での主人公が、別の物語では通行人のような形で登場する、この小説そのものが、相身互いの構造なのだ。 その5編のうちのひとつの主人公である、付き合っている男性との結婚に踏み切れない女性が、映画全体の主人公になっている。 黒木の親友を演じる藤間爽子は、出番は少ないものの、強い印象を残す。回想シーンでふたりの中学時代を演じる、近藤華と白鳥玉季、そして黒木の祖母となる風吹ジュン、謎めいた高齢者の草笛光子なども、世代の異なる女性たちが、不思議な縁で繋がっていく。その構成の面白さもさることながら、それぞれの人生が、ひとつのエピソードに凝縮されて、短い時間で描かれているので、満腹感もある。 原作の持つ「意外な接点」が、映画では、ラストでたたみかけるように明かされていき、たいした謎ではないのだが、ミステリー映画で意外な犯人が判った気分にさせてくれる。

24/10/19(土)

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