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時代と向き合う映画を鋭い視点で紹介
佐々木 俊尚
フリージャーナリスト、作家
The Path~パルバティ・バウル 風狂の歌ごえ
23/8/5(土)
ポレポレ東中野
近年は音楽ドキュメンタリーに秀逸な作品が増えているが、本作も新たな音楽映画として注目すべき感動作。インドの大地を歩き、托鉢しながら歌い舞い踊る「吟遊行者」の世界を描いている。 タイトルにあるバウルというのは、インドのベンガル地方で昔から受け継がれている吟遊行者のこと。本作の女性主人公パルバティは富裕なバラモンの家に生まれながらもバウルに身を投じた。「黄金の河」というのは、修行者と一般社会を隔てるものを指すのだという。とはいえ、そのような背景を知っていても知らなくても、事前の予備知識をなしに本作を観たとしても、スクリーンいっぱいに舞い踊るパルバティの姿と女神のような歌声に多くの観客はノックアウトされるだろう。それほどまでに魅惑的なのである。 苛烈な自然と社会から生まれたインドの宗教は、日本人には理解しがたい。それを理性で認識するのは難しいが、しかしこのような音楽と舞を媒介することで、その超越性の片鱗を身体的に受け入れられるようにも感じる。音楽とはさほどに身体的な受容なのだなあと改めて感じさせてくれる映画である。
24/11/1(金)