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恩田 泰子
映画記者(読売新聞)
ロボット・ドリームズ
24/11/8(金)
新宿武蔵野館
見ている間、ずっと心が揺さぶられ、涙腺はうるみっぱなし。パブロ・ベルヘル監督によるアニメーション『ロボット・ドリームズ』は、1980年代のニューヨーク(ただし、住人はみんな動物)を舞台に、大切な誰かとの出会いと別れ、そして幸福な記憶を描く。主人公は、アパートでひとりぼっちで暮らす孤独な犬と、その犬がテレビ通販で買った「友達ロボット」。「ふたり」はすぐに仲良くなって、楽しい時間を重ねて行くのだけれど、ある日、思わぬ出来事が──という物語。キャラクターの造形はシンプル、せりふらしいせりふもないが、ふとした動き、映像と音楽がそれぞれの心象を鮮やかに描き出す。とりわけ、再会を待つロボットが見る「夢」の光景の豊かさと言ったら。サラ・バロンによる原作の同名グラフィックノベルはただでさえすばらしいのだが、映画は、監督が80年代ニューヨークの空気、往年のミュージカル映画のエッセンス、そしてアース・ウインド&ファイアーの『セプテンバー』と、ノスタルジックなエッセンスをたっぷり注入して、幸福な記憶をめぐる物語をさらに魅力的なものにしている。終幕はたぶん涙腺決壊。念のためハンカチ必携で、どうぞ。
24/10/30(水)