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夏目 深雪
著述・編集業
動物界
24/11/8(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町
舞台は、一部の人間が動物に変化していってしまう近未来。人々は鳥、カメレオン、タコなど様々な動物と人間とのハイブリッド=新生物を隔離し、その襲撃に耐える日々を送っている。 セザール賞最多12部門にノミネートされたという本作は、10代の頃に夢中になった萩尾望都の作品を想起させた。優れたSFでありながら、人間社会への洞察にも富んだものであるという意味で。人間と動物はここでは二項対立ではなく、隣人が突然角や羽根が生え出したりする。実際、本作ではポール・キルシェ演じる息子が新生物に変化していってしまう。彼らを公には隔離する一方で、家族が新生物になってしまった場合は、匿ったりする人もいる。彼らへの対処が「排除」と「共生」の間で揺れている人々を描き、ウィルスや移民など、近年社会問題となっている諸問題を想起させる。 また、なんといっても新生物の造形が素晴らしい。ずっと飛べなかった鳥人間がついに飛ぶことができる感動のシーンは、近年の特殊効果の進化の賜物だろう。「人間/動物」の境界を行き来する眩暈のするような悦楽。萩尾望都の漫画のような映画を観ることはないだろうと思っていたが、そうでもないのかもしれない……。
24/11/3(日)