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現代の名人芸を追い続けて
山本 益博
料理評論家、落語評論家、プロデューサー
『鈴本三十日会 柳家権太楼独演会』
24/11/30(土)
鈴本演芸場
1年の内の大の月の31日は、上席中席下席それぞれ10日間興行のところ、1日余るため「余一会」と称して特別興行となるのだが、11月は30日も特別興行として『柳家権太楼独演会』が開かれる。 先日、有楽町で毎月開かれている『朝日名人会』に出かけた。トリの柳家さん喬の『火事息子』がお目当てだった。ところが、会場に着くと「柳家さん喬休演のお知らせ」。がっかりしたのだが、落語家が出演する会ではよくあることで、代演が柳家権太楼とあった。しかもすでにネタ出しがされていて『文七元結』とある。突然、別の興味が湧いてきた。急な代演で『文七元結』という大ネタは珍しい。 権太楼は、高座に上がると「さん喬さんからじかに電話があり、代わりに出てくれないかと。責任感の強いさん喬さんのこと、よほど体調が思わしくないのだろうと、すぐに承知した」と代演のいきさつを丁寧に説明するなかで「ちゃんと文七、やりますから」と言って笑わせ、噺の本題に入っていった。この「まくら」が絶妙で、大真打ならではの貫禄のある軽妙さだった。 本題の『文七元結』が素晴らしかったのは言うまでもない。11月の「三十日会」では、30年ぶりに『ぜんざい公社』を高座にかけるという。
24/11/3(日)