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小さくとも内容の豊かな展覧会を紹介

白坂 由里

アートライター

所蔵作品展『MOMAT コレクション』/ コレクションによる小企画 フェミニズムと映像表現

東京国立近代美術館のギャラリー4で開催中の「コレクションによる小企画 フェミニズムと映像表現」は小規模ながらも必見だ。1960〜70年代に新しいメディアとして登場したビデオを表現手法として手に取り、社会に異議を唱えたアーティストを、「マスメディアとイメージ」「個人的なこと」など4つのキーワードで紹介している。全員がフェミニズム・アートの担い手というわけではないが、自己と社会をめぐる課題に映像表現を通じて向き合っている。なお同展では、フェミニズムとは「女性の生の可能性の拡大を求めると同時に、あらゆる性の平等をめざす思想や活動」としている。 例えばテレビの料理番組をパロディ化し、家庭内労働や家父長制度への違和感を示すマーサ・ロスラーの《キッチンの記号論》。また、米国のテレビドラマ『ワンダーウーマン』の変身シーンをループ編集し、エンディング音楽の歌詞でハッとさせるダラ・バーンバウムの《テクノロジー/トランスフォーメーション:ワンダーウーマン》。いずれもステレオタイプの女性像への違和感に気づかせる。 あるいは映像表現の変化という観点ではどうか。ジョーン・ジョナス、リンダ・ベングリス、塩田千春、キムスージャは、映像の特性を活かしたパフォーマンスをそれぞれに行っている。また、4人の主婦が起床から就寝までの行動について、家の間取り図の上で駒を動かしておしゃべりする出光真子の《主婦たちの1日》では、自分の限られた行動範囲にふと気づく瞬間がある。一方、同じおしゃべりでも80年代生まれのアーティストの共作、遠藤麻衣+百瀬文の《Love Condition》では、何がどう問題かを粘土をこねながら話し合い、ひとつの提案にまでたどり着く。展覧会を見終わった後に感想を話し合うと、自分の気づかなかったことに気づき、考えを更新させることができる。

24/11/7(木)

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