評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
演劇鑑賞年300本の目利き
大島 幸久
演劇ジャーナリスト
日英国際共同制作 KAAT × Vanishing Point 『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』
24/11/28(木)~24/12/8(日)
KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ
ノーベル文学賞には未だに手が届かない“世界の村上春樹”。しかし、世界はジッと彼を見守っている、と思う。村上作品の短編小説の舞台化が『品川猿の告白』だ。原作は『品川猿』と『品川猿の告白』の2作品。原案・構成・演出がスコットランド・グラスゴーを拠点にする劇団ヴァニシング・ポイントの芸術監督マシュー・レントン。日英国際共同制作だからやはり“世界のハルキ”だ。 今作の村上ワールドは、人間と猿との出会い。別個のふたつの情況が存在する。ひとつは、ある旅行者が群馬の温泉町の山奥にある寂れた旅館に着く。そこで温泉の番をしている猿と会うのだが、その猿に驚愕する。何と人の言葉を話し、「品川猿」と名乗る。さらにブルックナーやシュトラウスの音楽を鑑賞するのだ。 ふたつめは東京。若い女性が自分の名前を忘れ、深刻なアイデンティティの危機に陥っている。やがてふたつの物語が絡み合っていくのだが……。 品川猿を演じるのが劇団ヴァニシング・ポイントのサンディ・グライアソン。5人の英国人俳優が出演する。若い女性みずきは那須凜。伊達暁ら4人の日本人俳優の出演だ。空間造形の中に字幕を組み込み、多言語出演のスタイル。村上作品の舞台化は『ねじまき鳥クロニクル』や『海辺のカフカ』が知られるが、人形遣いのエイリー・コーエンも登場する。実は、恋の物語だという。
24/11/17(日)