評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
社会を映しだす映画をわかりやすく紹介
池上 彰
ジャーナリスト、名城大学教授
FPU ~若き勇者たち~
25/1/10(金)
TOHOシネマズ 日比谷
国連のPKO(平和維持活動)に参加するために組織された中国の警察部隊の活躍ぶりを描いたアクション映画。中国で大ヒットを記録したというのもうなずけます。中国が世界の平和のために尽力していることをアピールする国策映画だからです。 アフリカの架空の国「サンタリオン」では政府軍と反政府組織の武力紛争が激化し、多数の住民が虐殺されている。国連の要請を受けて中国の部隊が派遣され、住民の安全確保のために奮戦する。という設定です。 こうした設定の映画は、かつてはハリウッド映画の定番でした。米軍が「世界の警察官」として活躍するという設定の映画が多数制作されました。 しかし、いまのアメリカは「アメリカ・ファースト」で、自国の兵士に犠牲が出るのを恐れて軍を紛争地に派遣しなくなりました。その「空白」を埋めるのは中国だ、というわけです。 いまや中国こそが「世界の警察官」になろうとしている国家意思を感じさせる映画です。 映画は、紛争が相次いで人々は悲惨な生活を送っているというアフリカについてのステレオタイプな描き方が露骨で、決して好感が持てるものではありませんが、かつてのハリウッド映画も大同小異だったなと思い出してしまいます。 派手なアクション場面は技術面での中国の映画制作能力を見せつけますが、正直なところ「中国は正義の味方」というスタンスの幼稚さが目に付く映画です。
24/11/23(土)