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春日 太一
映画史・時代劇研究家
ドリーム・シナリオ
24/11/22(金)
新宿ピカデリー
ニコラス・ケイジが突如としてさまざまな人の夢の中に現れる。その設定を聞いた時は、奇抜かつ滑稽な画ヅラだけを狙った出オチ的なコメディ映画──と思っていた。が、全く違っていた。どこまでもシリアスな、そして個人的にも突き刺さるもののある、人間ドラマだった。 ニコラス・ケイジが演じるのは、真面目で冴えない大学教授。そんな彼が突如として、見ず知らずの人間も含めた多くの夢の中に登場することになる。彼は夢の中で何をするわけでもない。大変な状況に陥った人たちをただ傍観しているだけなのだ。そして、なぜそのような現象が起きているかは、彼も全く把握できていない。 そして、主人公はいつの間にか世間で騒がれ、時の人として祭り上げられる。が、やがて夢の中の主人公が暴走。次々と残虐な行為を起こすようになると、人々は一転して主人公を憎み、排除していく。 当人としては地道に研究を進め、その成果を世に出したいだけ。にもかかわらず、それと全く関係のないところで、評価は激しく上下してしまう。世間は勝手なイメージを作って持ち上げ、理不尽なレッテルを貼り付けて叩く。もちろん持ち上げられている時はそれなりに気持ちよくもなっているが、それでも決して居心地は良くない。 現代の寓話的な物語は、それなりに世間に名前を出して生活している人なら、少なからず当てはまるところがあるかもしれない。なにしろ、かく言う私が「うわ、これって少し前の自分自身みたいだ……」と、主人公のアップダウンが実に生々しく思えてしまったのである。
24/11/21(木)