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水先案内人のおすすめ

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時代と向き合う映画を鋭い視点で紹介

佐々木 俊尚

フリージャーナリスト、作家

小学校~それは小さな社会~

日本の小学校でどんな教育や生活指導が行われているのかを、実に暖かい視点で描いたドキュメンタリー。新入生歓迎会での合奏でシンバルに応募した少女が、なかなかうまく叩けず泣き出してしまう。ときには厳しい言葉をかけながらも優しく指導する先生とともに上手に演奏できるようになる。そんな話がたくさん出てきて、心温まる。 しかしそれ以上に驚くのは、本作が欧米で高い評価を得ているということだ。なんとフィンランドでは20館の拡大公開となって大ヒットしているのだという。その理由は、本作で描かれている小学校の生活指導にある。教室の掃除や給食の配膳などを子どもたち自身がおこなうという日本式の教育が欧米では驚異的に映るらしい。靴箱に並べられた靴の数々を子どもたちが協力してきれいに整然と揃えていく姿など、たしかに実に日本的な秩序意識である。 かつてはこのような公衆道徳や秩序意識は、当のわれわれ日本人から「古くさい」「秩序の押し付け」とあまり好ましく思われていなかった。昭和のころは、このような生活指導自体が全体主義的な管理教育だとして批判されていたのだ。それが21世紀に入り、好ましい教育として海外からも評価されるようになる。時代による価値観の変化とはこのようなものか、と興味深い。 ただ留意しておきたいのは、このような日本の教育を支えている教師たちの過重な労働が最近は社会問題になっていること。本作でも早朝の電車で学校に通勤してくる先生の姿が描かれている。また本作の舞台となっているのは、比較的豊かなエリアである東京・世田谷区の小学校であること。それらを気に留めておいたうえで、この楽しく暖かい映画を楽しんでほしいと思う。

24/12/2(月)

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