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政治からアイドルまで…切り口が独創的
中川 右介
作家、編集者
正体
24/11/29(金)
TOHOシネマズ日本橋
横浜流星が変装して、5つのキャラクターを演じ分けるのが、ひとつの見どころ。 死刑囚の青年が逃亡し、変装して架空の人物になりすまし、警察に追われながら、自分の無罪を証明してくれる証人を探していく。サスペンスものとしてストーリーは展開していく。 指名手配になって、テレビを含め大々的に顔写真が公開されているのに、彼に接する人は、最初は彼が逃亡している死刑囚だと気が付かない。彼に、殺人犯という凶暴なイメージが感じられないからだ。 スマホとネットで情報が拡散され、プライバシーなどこの世には存在しない現代社会の恐ろしさも描かれるが、一方で、設定に無理も感じた。果たして現代社会で、偽名で働くことができるだろうか。彼はフリーライターになるのだが、いまや、原稿料をもらうときには、マイナンバーやインボイスの登録番号が必要なのだ。 そういう点での無理はあるが、ブラックな工事現場の現状、警察権力の恐ろしさ、ネットの怖さなど、現代社会の闇と病みを描きながら、エンタメとして飽きさせない一作。
24/12/1(日)