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ドキュメンタリー評論のエキスパート

村山 匡一郎

映画評論家

どうすればよかったか?

札幌に暮らす監督の両親と姉。その姉が若い頃に統合失調症を疑われるが、医師で医療研究者の父母はそれを認めず、姉を精神科の診療から遠ざけ、姉の症状が悪化すると玄関に錠をかけ閉じ込める。そんな家族の姿を、監督が実家に戻る度に20年以上にわたって撮影したドキュメンタリーだ。どんな家族にも外部に知られたくない秘密があるとはいえ、その秘密をあからさまにすることには抵抗も強い。それが姉の病気であり、両親が医師であるという矛盾に、監督の抱くジレンマが伝わってくる。そんな監督自身の内省を込めたセルフ・ドキュメンタリーであり、自分の家族を撮影することの苦悩と戸惑いが滲み出ていて、被写体としての家族の姿と撮影する監督の姿勢の間に緊張関係がみなぎっていて引き込まれる。

24/12/7(土)

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