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アニメも含め時代を象徴する映画を紹介

堀 晃和

ライター(元産経新聞)、編集者

クレイヴン・ザ・ハンター

父と子の対立。物語に古くからある王道の構成だ。 超人的な身体能力で堂々と標的を狙い、見事遂行する。まるで猛獣のようだ。銃弾をくぐり抜け、高い壁をものともしない。目が離せないド派手な格闘シーンから始まるが、支配的な父親のもとで育った2人の兄弟という家族関係が間を置かずして提示されたことで、いっそう作品世界に引き込まれた。単なるバイオレンス表現にとどまらず、主人公の強い葛藤や苦悩を繊細に描く。 母を亡くした少年セルゲイ(アーロン・テイラー=ジョンソン)は、裏社会を束ねるボスの父ニコライ(ラッセル・クロウ)から悲しむことを許されず、強さを求められる。父と弟と3人で狩りに出かけた先でライオンに襲われ、瀕死の重傷を負うが、百獣の王の血液が体内に偶然入ったことで、驚異的な力を獲得。十数年後、巨悪を狩るハンター“クレイヴン”として恐れられるが、“怪物”が率いる組織に狙われ、やがて父とも対峙し……。 原作では、スパイダーマンの宿敵(ヴィラン)として描かれたキャラクター。ただ、本作では、虚弱な弟への深い愛情と強い正義感をのぞかせる。暗さの中にもヒーローが放つまばゆい“光”を感じた。続編を期待せずにはいられない。

24/12/23(月)

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