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小劇場から大劇場まで、年間300本以上観劇。素晴らしい舞台に出会うため、気になる作品は何でも観ます。

森元 隆樹

演劇ジャーナリスト/プロデューサー/演劇伝道師/読売演劇大賞選考委員

果てとチーク『きみはともだち』

劇団「果てとチーク」によって2023年1月に初演され、第29回劇作家協会新人戯曲賞最終候補作となった『はやくぜんぶおわってしまえ』の再演を、2024年8月、アトリエ春風舎で拝見した。 <<<>>> 「生徒の性自認が揺らぐ」 「外見で順位をつけてはいけない」 私立清正(せいせい)女子ミス・ミスターコンは、 夏休み前日、突然その中止を余儀なくされた。 結果発表直前の指示に、未だ納得できない実行委員、 そして特に関係ない友人たちの放課後は、騒がしくも淡々と過ぎていく。 <<<>>> 当時手にしたチラシには、そう「あらすじ」が記されていて、ストーリーの横軸は確かに、水平に這うように、まさに「騒がしくも淡々と」伸びていった。 しかし縦軸は。 出演者の数だけ、舞台に関わった者の数だけ、そして観る者の数だけ、さらには『はやくぜんぶおわってしまえ』のことなど全く知らずに生きている人の数だけ無数に書き込まれ、そのすべてが重なっているかに見えて、永遠の双曲線を描いていた。 声の出し方を掴まえきれない者ほど、言葉に出来ない心の底を何度も何度も搔(か)き毟(むし)り、やがて瘡(かさ)蓋(ぶた)を醒めた瞳で見つめた後(のち)、閉じ込めた想いと引き換えに、なんにでも対応できる、誰にも気付かれない笑顔を手に入れる。 生きているうちに、誰かに、「その笑顔、やめなよ」と言われることを、ほんの少しだけ待ちながら。 そして今回、『はやくぜんぶおわってしまえ』の続編として、その10年後を描いた『きみはともだち』が、同じアトリエ春風舎で上演される。 <<<>>> どうしたら あんたと ともだちのままでいられるかな。 今年8月に再演した、『はやくぜんぶおわってしまえ』から約10年後のお話。 わかりあえないまま、それでも友達でいることの、尊く辛い“終わらなさ”を描く。 野澤と園は幼馴染。 高校の同級生・由海の結婚式に出た後、大学時代の友人・衛の実家であるカラオケ店で、 園の恋人と三人で飲み直すことに。何か大切なことをごまかすように盛り上がる二次会。 しかしある“相談”をきっかけに、彼らの関係が徐々に軋み始める。 <<<>>> 劇団のホームページにそう記された『きみはともだち』の横軸たるストーリーに期待を膨らませつつ、今回記される無数の縦軸の伸びてゆく先を、客席からしっかりと見つめていたい。

24/12/30(月)

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