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水先案内人のおすすめ

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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

サンセット・サンライズ

都会で暮らす人が、縁もゆかりもない地方へ移住するのが、小さなブームになっている。コロナ禍でリモートワークが普及したので、必ずしも都会にいる必要がなくなったのと、過疎化が深刻な自治体が移住を歓迎というか、積極的に誘致していることも、この動きを後押ししている。 というわけで、都会での生活に疲れた若者が、自然が豊かで家賃が安い地方へ移住する話である。東京の会社でやっていた仕事をリモートワークで続ければ、収入は都会なみのまま。田舎は家賃が安いので、支出は減る。一方、地方は住民が増えて、町や村は活性化して、ウィンウィンとなるはずなのだが……。 当然、単純な成功談、美談にはならない。都会では隣りに住んでいる人が誰なのかも分からないが、田舎では、新住民が来たら、すぐに全住民が知ることになり、その行動も、つねに誰かに見られ、見られたことは瞬時に伝わっていく。ネットより口コミのほうが速く、貨幣経済よりも物々交換で経済がまわる社会。 そういう衝撃が次々と主人公を襲い、都会の生活しか知らない者にとっては、一種のホラーとして始まる。 田舎の人は純朴で、みんな人がいいというのは都会人の幻想に過ぎないことが、けっこうあからさまに描かれる。だけど、自然は美しいし、魚介類も野菜もおいしそうだ。 移住先は東北の三陸地方なので、暮らしている人びとには、大震災の傷跡が残っている。その意味で「震災映画」でもある。 菅田将暉は、何を考えているのか分からず、主体性があるのか流されているのかもはっきりしない、いかにも「現代の青年」の役。こういう、しどころのない役をやらせたら、いま、いちばんうまい。

25/1/16(木)

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