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伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

満ち足りた家族

チャン・ドンゴンの兄にソル・ギョング。これこそ名作『八月のクリスマス』のホ・ジノ監督だから思いついた組み合わせだろう。しかも外科医と弁護士の兄弟というエリートの子供が事件を起こすという展開こそ、究極の正義と命の選択と言えよう。 一見、良き医師だが面子を気にするチャン・ドンゴン。一方、美しい後妻と共に新しい命にも喜ぶ拝金主義のソル・ギョング。 そんなふたりの年頃の子供たちが手を血に染めてしまったとなれば、彼らの感情が揺らぐことは間違いない。更に脚本が緻密なのは、彼らの妻を巻き込み、母性による選択が描かれる点だ。 ミステリーの定義をしっかり踏みながら、芸達者な俳優たちにより追い詰められた人間たちが狂気のラプソディを奏でる本作。他人事とは思えない設定に、物事は簡単に白黒をつけられるものではないと痛感した。

25/1/17(金)

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