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水先案内人のおすすめ

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平辻 哲也

映画ジャーナリスト

筒井康隆氏が1998年に発表した同名小説を『桐島、部活やめるってよ』『紙の月』の吉田大八監督が79歳の長塚京三の主演で映画化。 主人公は大学教授の職を辞めて10年、愛妻にも先立たれた渡辺儀助(77歳)。大きな古い日本家屋に暮らし、年金と講演料、原稿料を計算しつつ、「それが尽きたら死ぬ時だ」と決め、遺言書も書いている。それでも、シニアライフを満喫しているが、ある日、パソコン画面から「敵がやって来る」とのメッセージが流れてくる……。 
長塚はかつてインタビューで「今の映画は若者のためのもの」と語っていたが、そんな時流とは真逆を行く。シニアが主人公で全編モノクロ。モノクロと聞くと、敬遠する人もいるかもしれないが、まったく気にならない。前半は元大学教授の日常生活の描写がほとんどだが、包丁さばき、物置の片付けといった丁寧な生活ぶりに魅せられてしまった。 第37回東京国際映画祭では最高賞の東京グランプリ、監督賞、男優賞の3冠を受賞。審査委員長のトニー・レオンも「すべてが完璧」と絶賛。老後は誰もが通る道だ。ユーモアもたっぷりなので、気軽な気持ちで映画館にぜひ。傑作を見た!という気持ちになれる。

25/1/19(日)

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