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村山 章
映画ライター
ディックス!! ザ・ミュージカル
25/1/17(金)
新宿ピカデリー
NYのアングラ舞台から生まれたほぼ全編下ネタの不謹慎ミュージカルという触れ込みで、実際に耳と目を覆うような下ネタが満載なのだが、不意打ちをくらったように涙してしまった。楽曲はどれもどこかで聴いたことあるような「なんちゃって感」だし、歌詞もセリフもふざけ倒しているのだけれど、トラッシーな装飾をかき分けかき分け探っていくと、中心にあるのはものすごくピュアなヒューマンドラマなのだ。 生き別れの双子が、別れた両親のよりを戻させようとするプロットは『ファミリー・ゲーム/双子の天使』や『罠にかかったパパとママ』、さらに遡ればケストナーの児童書『ふたりのロッテ』が元ネタで、いわば誰もがどっかで見聞きしたことがあるおなじみのもの。そんな定番のストーリーを過激なギャグでこねくり回しつつも、見せ方自体は堂々たる王道のミュージカル映画で、ジャンルのツボをみごとに押さえている。映画って形があれば成立するのだなと、改めてエンタメの強度に感心させられた。 しかも硬直した世の中に真っ向から斬り込む勇猛果敢さがあって、パロディも突き詰め方次第では真理のようなものにたどり着くのだなと、どうしてあふれたのかわからない涙にムリヤリ理由を付けてみた。 おそらく泣く人より笑う人、それよりも呆れる人が多い作品だと思いますが、チャレンジングで感動的で、全方位に刃を突き立てる最高のバカ映画としてオススメです。
25/1/19(日)