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春日 太一

映画史・時代劇研究家

邪悪なるもの

年に何本か、とてつもない映画が南米から日本にやってくる。本作も、まさにそう。アルゼンチンを舞台にした、強烈な一本だった。 人間の肉体を腐敗させる「悪魔憑き」が蔓延している世界。辺境の村で「腐敗者」が見つかったことから始まる恐ろしい物語が、ヒリヒリする緊張感とともに展開する。 全体を貫くのは、極限状況に追い込まれた人間たちの心理ドラマだ。ことなかれ主義で事態に対応しない警察、我が身を大事にするあまり悲劇を悪化させる地主、家族を守るため逃げようとする夫の話を聞き入れようとしない別居中の妻。怒涛の勢いで腐敗が広がる中、状況を受け入れられずに冷静さを欠いた人々がパニックを広げていく。 先の展開が全く読めない、緻密に組み立てられたプロット。開始から一秒たりとも息をつかせない、スリリングな演出。どこまでも隙のない作りは「圧巻」の一言だ。

25/1/29(水)

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