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現代作曲家の立場で分かりやすく紹介
三枝 成彰
現代作曲家
ORCHARD PRODUCE 2025 高砂熱学 PRESENTS 鈴木優人&バッハ・コレギウム・ジャパン×杉本博司 with G.B.Piranesi モーツァルト:オペラ≪ドン・ジョヴァンニ≫
25/2/20(木)~25/2/24(月)
めぐろパーシモンホール 大ホール
モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』を、私はオペラ史に残る傑作であるとともに、この“楽聖”の気骨ある一面を垣間見られる作品だと思っています。 初演は1788年。フランスはルイ16世の統治下にあり、神聖ローマ帝国ではハプスブルク家が権力を誇っていました。貴族たちのまっただなかに身を置きながら、彼は堕落した貴族たちの放埓ぶりを批判精神たっぷりに描いてみせたのです。当時のヨーロッパは階級社会。音楽家が芸術家として尊敬されるのは14歳年下のベートーヴェン以降の話。モーツァルトが生きていたころ、音楽家はまだただの職人にしかすぎません。そんな状況で彼はこの堕落した貴族が身を亡ぼす物語を世に問うたわけで、一歩間違えば命すら危うくしかねない行いです。彼は初演から3年後に亡くなりますが、命を賭してこのオペラを書きながら、自らの死の翌年に勃発するフランス革命と貴族の時代の終わりを予感していたのかもしれません。 Bunkamuraが主催するORCHARD PRODUCEは、外部のさまざまなホールと組んで展開する意欲的なプロジェクト。今回の舞台は東京・目黒のめぐろパーシモンホールです。指揮者の鈴木優人さんと古楽器アンサンブル、バッハ・コレギウム・ジャパンはこの稀代の傑作をどのように聞かせてくれるのでしょうか。美術を手がけるのは現代美術作家の杉本博司さん。杉本さんはモーツァルトと同時代を生きた建築家ピラネージに注目し、彼の作品をフィーチャーした舞台を作られるとのこと。衣裳はソニア・パークさんとウィリアム・オウェソンさん。出演はクリストフ・フィラーさん(ドン・ジョヴァンニ)、平野和さん(レポレッロ)、森麻季さん(ドンナ・アンナ)、山本耕平さん(ドン・オッターヴィオ)ほか。 公演は2月20日(木)、21日(金)、23日(日・祝)、24日(月・休)。きっと刺激に満ちた舞台になることでしょう。
25/2/12(水)