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平辻 哲也
映画ジャーナリスト
ケナは韓国が嫌いで
25/3/7(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町
物価や税・保険料の高騰、上がらない賃金、富める者と持たざる者の格差はますます広がっている。生きづらい世の中と考えているのは、年代を問わずだと思うが、一番割りを食っているのは若者層だ。 そんな状況は日本だけではない。韓国は日本以上に少子高齢化が進み、格差は広がりを見せている。そんな将来の見えない母国を離れて、単身ニュージーランドへ移住し、新たな生き方を模索するケナの物語。主演は『グエムル 漢江の怪物』(2006)でソン・ガンホの娘役を演じたコ・アソン。あの少女も32歳になっていて、感慨深い。 片道2時間、満員の中での通勤、金銭面で頼ってくる親、富裕層の生まれゆえに持たざる者の気持ちは理解できない恋人。愛情やしがらみを感じつつも、全てを捨てて、歩みだすヒロインの姿には、国や性別、年代を越えて共感できる人が多いだろう。移住のリアルも興味深い。一歩踏み出す勇気を与えてくれる作品になっている。
25/2/27(木)