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政治からアイドルまで…切り口が独創的
中川 右介
作家、編集者
映画ドラえもん のび太の絵世界物語
25/3/7(金)
TOHOシネマズ日比谷
毎年書いているかもしれないが、子どもだけが見るのはもったいない、SF冒険ファンタジー映画。 今回、ドラえもんたちが行くのは絵の中の世界。ある絵の中に入ったら、そこは13世紀のヨーロッパの、いまでは地図にもない小さな王国で、不思議な少女と、絵のうまい少年、謎めいた画商の青年たちと出会う。 劇場版ドラえもんは、ここ数年、独裁者や侵略者と戦うという、21世紀の現実世界の国際情勢を反映させた物語が続いたが、今回の敵は赤いドラゴン。人間同士の闘いではないから、単純に「やっつけろ!」と楽しめる。タイムリープものとしては例によって二重三重の仕掛けがあり、けっして子どもだましではない。 しずかちゃんは、箒にまたがって空中戦をくりひろげ、『魔女の宅急便』とは比べものにならない躍動感。 中世の国に合うように、のび太たちの服装は昔のヨーロッパ風なのだが、ドラえもんがなぜかもっと古い時代のイメージのマントみたいなのを着ている。それがなぜか分かるのがクライマックスで、ハリウッドの古典的名作『十戒』へのオマージュだった。あの映画のあの有名なシーンが登場するのは、感動もの。それがオマージュであることなんか、子どもには分からないだろうけど、感動するだろう。 絵の中の世界は、いかにも絵のようで、現実ののび太の家がある世界とは背景のトーンが異なるなど、技巧的にも楽しめる。 世界の名画もたくさん出てくるし、美術ファンもぜひ。
25/2/28(金)