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映画から自分の心を探る学びを
伊藤 さとり
映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)
ケナは韓国が嫌いで
25/3/7(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町
母国が嫌い。理由は国により様々だが、不思議と日本人の私も共感するところがあった。それはまだまだ色濃く残っている親世代が繰り広げる家父長制だったり、世界から取り残されている感覚だ。自分に合う国はどこなのか。確かに人により相性が良い環境や教育というものがある。特に子育てをしていると、その子の特性にあった教育を受けられる学校を探してしまうので、決して「母国が最高」とは思わない。 主人公のケナが探し求める彼女の願いにピタリとハマる国はどこなのか。海外に飛び出した彼女が目にするのは、人種差別だったり、他者からの勝手な偏見だったりと悪い面だったりで、憧れと現実は違うのだと理解する。映画はドキュメンタリータッチを意識したようなきっちりとしていない構図で、海外で生活をする若者たちの様子を捉えていく。確かに若いうちは居場所を探すのかもしれない。自分自身が呼吸しやすい場所を求め、外国語を学ぶ者もいる。考えてみると昔よりも留学生を見かけるようになった。彼女彼らから話を聞いたことはないが、もしかするとケナと同じ感情なのかもしれない。そのせいかやたらと親近感が湧く旅する映画だった。
25/3/11(火)