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佐藤 久理子
パリ在住、文化ジャーナリスト
教皇選挙
25/3/20(木)
TOHOシネマズ シャンテ
ロバート・ハリスの原作を元にした本作は、ローマ教皇を決める世界一ガードの硬い選挙を、辛辣なユーモアを込めて描くサスペンス。教皇がある日突然、心臓発作で他界。後釜を決めるため、世界中から枢機卿たちが集まり、密室(システィーナ礼拝堂)のなかで選挙が始まる。票が割れ、何日にもわたり選挙が繰り返される中、ある陰謀が明るみに出る。 「選挙は戦争じゃない」「いや戦争だ!」というセリフがあるが、いかにもこれは権力を求める者同士の戦いそのもの。今日の政治と変わらない状況がバチカンというスピリチュアルな世界でも展開し、精神性はどこへやら、というわけだ。個人的にはマウリツィオ・カテランの芸術作品「隕石により倒れた教皇」をダイレクトに彷彿させるシーンにもっとも感銘を受けた。そして最後のオチに込められた痛快な風刺に喝采。文句なく面白い傑作だ。
25/3/16(日)