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日本映画の新たな才能にフォーカス
イソガイマサト
フリーライター
STEP OUT にーにーのニライカナイ
25/3/14(金)
新宿ピカデリー
『夏目アラタの結婚』(24)、『私にふさわしいホテル』(24)、『Page30』(25)といったタイプの違う作品を次々に発表し、いまもなお勢いが衰えることのないヒットメイカーの堤幸彦監督。本作は、そんな堤監督が大ヒットシリーズ『TRICK』の仲間由紀恵を約10年ぶりに主演に迎え、沖縄出身の平一紘監督と共同で撮ったダンサーを目指す少年と家族の物語だ。 映画は、仲間が演じたシングルマザー・朱音の息子・照屋踊を中心に展開していく。ダンススクールに通うリサに憧れ、ダンスを始めた彼はその才能をどんどん開花させ、彼女と一緒に東京でダンサーとして活躍する夢を抱くようになるが……。 興味深いのは、舞台となった自然豊かな沖縄に流れる、本土とはまた違う常識や価値観、人間関係。そこには夢をつかむために故郷から旅立とうとしている若者もいれば、沖縄から出ることを許されない若者もいるし、最初から地元で生きていこうと思っている若者もいる。 踊の家庭もちょっと複雑だ。茜は息子の背中を押すが、スナックで働きながら家族を支える母親の苦労を知っている踊は、人見知りで、いつも自分にくっついて離れない妹の舞のことも心配だから簡単には決断できない。そんな彼の成長と葛藤が、リサと一緒に披露するダンスを通して映し出され、観る者の心もざわつかせる。果たして、踊はどんな決断をするのか? 彼が求める理想郷(ニライカナイ)はどこなのか? そこにこそ、大きなテーマとメッセージが隠されている。
25/3/14(金)