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水先案内人のおすすめ

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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

教皇選挙

衣装と建物とのコントラスト、そこに居る人々の数や歩数まで計算されて映しているのではと疑うほど、洗練された画。これは宗教画か?と思えるようなその美しさに魅せられつつ、バチカン内部の秘密を探るようなミステリーは、とんでもなく面白く上質な火曜サスペンス劇場だった。とはいえ殺人事件は起こらない。次々と暴かれる事件は、彼らが過去に起こした「神に仕える身」としては許してはいけない行為だ。しかしながら、このジャッジを下すのも同じ枢機卿なので、誰が教皇に相応しいかを決めるのも人間だと思うと、結局は個人の好みなのだと伝えているような映画なのだ。 各映画賞で話題となるのも納得できる。その理由は、芸達者な各国の俳優が枢機卿を演じている点であり、主演はレイフ・ファインズと謳ってはいるものの、アンサンブル・キャストによる演技対決にさえ思える各俳優の怪演だった。空恐ろしいのは平和を祈るために枢機卿になったはずの彼らに、教皇になることへの執念さえ感じる点だ。しかもシスターたちとの関係値から、バチカン市国の教会にも男女の格差があるのだと痛感してしまう。世界で一番恐ろしいのは人間だと慄きながら、清廉潔白な人間など、そもそもこの世には居ないのだと痛感する展開に唸った大傑作、また観たい。

25/3/20(木)

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