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映画のうんちく、バックボーンにも着目

植草 信和

フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

アンジェントルメン

ガイ・リッチー監督の新作『アンジェントルメン』には、「M」と呼ばれるイギリス軍少将とその部下でイアン・フレミングという名の下士官が登場する。いうまでもなく、「M」はジェームズ・ボンドの上司、イアン・フレミングは「007」で世界的なベストセラー作家になる前の若き日の姿。フレミングのスパイ小説に親しんだ世代には、心ときめく設定だ。 『オペレーション・フォーチュン』『コヴェナント/約束の救出』と、快作を連打しているガイ・リッチー監督の本作『アンジェントルメン』は、エンタテインメントに徹した爽快な戦争アクション映画。第二次大戦下、ウィンストン・チャーチルがナチス侵攻を食い止めるために英国諜報機関MI6の前身と言われる特殊作戦執行部(SOE)に、特命をくだすところからドラマが始まる。 SOEの別名は、「The Ministry of Ungentlemanly Warfare」(非紳士的な戦争省)。本作の原題になっている。ガイ・リッチーによれば、「2016年になってようやく情報開示された、知られざる急襲作戦」とのこと。チャーチルが下したその特命とは? 英国特殊部隊によるナチスUボートの補給路を断つ破壊工作「オペレーション・ポストマスター」。従って、どんな戦争映画にもかつて描かれたことがない新鮮さが、本作の大いなる見どころだ。 コアな戦争映画ファンも知らない題材である上に、ヘンリー・カヴィル演じる本作の主人公のガス・マーチ=フィリップス少佐は、「007」シリーズのジェームズ・ボンドのモデルと言われている人物。どこを輪切りにしても、リッチーのフレミングと「007」へのオマージュにあふれた戦争映画なのだ。 ガイ・リッチー監督が、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ、『トップガン マーヴェリック』の製作者ジェリー・ブラッカイマーとタッグを組んだ『アンジェントルメン』。「爽快な戦争映画」などと賛美すると識者からお叱りを受けそうだが、独裁的な大統領や国家主席が世界を牛耳る理不尽な世相に背を向けて、ひたすら悪(ナチス)を叩きのめす「勧善懲悪戦争映画」でストレスを発散するのも、アリではないだろうか。

25/3/22(土)

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