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平辻 哲也

映画ジャーナリスト

ミッキー17

『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督の最新作が、北米で3月7日に公開。週末興収は1,910万ドルで、韓国人監督として初の1位を獲得した。しかし、製作費1億1,800万ドル、宣伝費8,000万ドルを考えると、興行的な成功は厳しいとされる。初週1位でも失敗作扱いされるという、不思議な状況だ。 物語の舞台は、宇宙開拓が進み、肉体や記憶の複製が可能になった未来。失敗続きの主人公ミッキー(ロバート・パティンソン)は、一発逆転を狙い、「死ぬたびに蘇る」仕事に就く。しかし、手違いで18号のミッキーも誕生し、ふたりで権力者に反撃を開始する……。 氷の惑星や謎の宇宙生物など、SF要素をふんだんに盛り込みながら、ブラック企業批判や命の価値といった現代の社会テーマを描いている。パティンソンの1人2役、権力者夫婦役のマーク・ラファロ、トニ・コレットの怪演も光り、ユーモアも随所に散りばめられている。前作よりも親しみやすく、極上のエンタテインメントに仕上がった。 米国での苦戦の理由は、現在SF映画が全体的に不調であることも影響しているのかもしれない。しかし、こんなに面白い映画を観ないのはもったいない。日本での逆転ヒットを期待したい。

25/3/25(火)

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