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平辻 哲也

映画ジャーナリスト

エミリア・ペレス

第97回アカデミー賞で最多12部門13ノミネートを果たし、助演女優賞と歌曲賞を受賞した異色のミュージカル。監督は『ディーパンの闘い』でカンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞したフランスの名匠、ジャック・オーディアール。 メキシコの麻薬カルテルのボス(カルラ・ソフィア・ガスコン)は、女性として生きることを決意し、弁護士の助けを借りてエミリア・ペレスとして新たな人生を歩み始める。犯罪組織の元ボスが、新たな人生を模索する中で、彼女を取り巻く3人の女性との関係が描かれていく。 生まれ持った性への葛藤、家族への思い、そして自立──。それぞれ異なる立場にある3人の女性の苦悩が、ミュージカルという表現形式と融合し、より力強く観客に訴えかける。 エミリア役を務めるのは、実際のトランスジェンダー俳優であるスペイン出身のカルラ・ソフィア・ガスコン。過去のSNS上での人種差別的な発言や、妻役のセレーナ・ゴメスへの侮辱が問題視され、一部ではアカデミー賞を逃した要因とも言われているが、本作での演技は見事。彼女の演じ分けは圧巻で、男性時代と女性時代の変化が見事に表現されている。 初の助演女優賞を受賞したゾーイ・サルダナは、『アバター』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』といった超大作での活躍が目立つが、本作では確かな演技力を証明。ミュージカルが苦手な人でも楽しめ、さらに深く考えさせられる作品だ。

25/3/27(木)

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