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木谷 節子
アートライター
企画展 ヒルマ・アフ・クリント展
25/3/4(火)~25/6/15(日)
東京国立近代美術館
数年前に『見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界』という映画を鑑賞して以来、機会があればぜひ見たかった展覧会。カンディンスキーや、モンドリアンに先駆けて抽象絵画を描いたスウェーデンの女性画家、ヒルマ・アフ・クリント(1862-1944)を、アジアで始めて紹介する大回顧展だ。 王立芸術アカデミーで芸術を学んだ美術エリートのアフ・クリントだが、彼女と言えば、やはり「降霊術」を通して描いたスピリチュアルな抽象画に尽きる。パステル調の色合に、花のようなモチーフやアルファベットが浮遊する10点組の大作〈10の最大物〉などは女子力満点。ちょっとレトロな作風の現代アートと言われても通用しそうな今っぽさも魅力である。本シリーズが描かれた当時は、まだモネがジヴェルニーで〈睡蓮〉を絶賛制作中、ピカソがやっとキュビスムを始めた頃、つまり今から120年近く前であることを考えると、アフ・クリントの半端のない時間の飛び越えっぷりがわかるだろう。 ただこれって降霊術で名前付きの「霊」から受け取ったヴィジョンなんだよねえ。アーティストとしてそこに辿り着いたカンディンスキーやモンドリアンを差し置いて「いち早く抽象画を描いた」と言うには、条件がかなり違ってくるような……。アフ・クリントのスピリチュアルな絵画が、今後美術史上でどのように扱われるようになるのかが興味深い。
25/4/4(金)