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水先案内人のおすすめ

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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

JOIKA 美と狂気のバレリーナ

仕事を得るためにはどんなことも厭わない。この信念は賞賛すべきことなのだが、世界的にもその情熱を利用する事件が相次いで暴かれている。自身の才能と努力だけではたどり着けない所があり、それを手にする為には決定権を握る者に気に入られる必要がある。こう書いた時点で、誰が悪者なのか思考を巡らすのが人間だ。映画は実話がベースであり、ボリショイ・バレイ団に入団したひとりのアメリカ人バレリーナの体験から着想を得ている。ロシア人ではないから格式ある芸術の椅子取り合戦で更に差別を受ける。メインダンサーになるにはスポンサーが必要なのかといった問題は、芸能界にも通じる問題だ。 バレエ界の裏を描きながら、人気さえあれば、お金さえあれば、美貌さえあれば仕事を手に出来るといった構図は、どこにでもあるのだと好奇心が止められなかった。あくまでも主人公のジョイ側の視点から描いた本作を観ると、彼女の行動は仕方がないのではと思う。才能だけではどうにもならない構造を作ったのは運営側であり、映画として引いた目線で描かれると、彼らが私腹を肥やす為に“他者の夢”を利用しているのかが浮き彫りになっていた。それにしてもダイアン・クルーガーの圧倒的な存在感よ。そして『17歳の瞳に映る世界』の演技が記憶に残るタリア・ライダーの追い詰められるバレリーナの狂気に近い表現力には目を奪われた。

25/4/16(水)

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