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水先案内人のおすすめ

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夏目 深雪

著述・編集業

けものがいる

フランスの鬼才ベルトラン・ボネロの新作。ボネロは今までも様々な作品を撮ってきたが、私は同じく仏の新鋭トマ・カイエ監督の長編2作目『動物界』と似ていると思った。それは、萩尾望都の漫画みたいだという意味である。 1910年のパリ、2014年のロサンゼルス、2044年のパリ、物語は3つの時空を行き来しながら語られ、常に主人公になるのはガブリエルとルイ。2044年のパリはAIが人間の仕事を奪っている状況で、ガブリエルは仕事を探している。だが、そのためにはDNAを浄化し「感情の消去」をしなければいけない。ガブリエルは過去のトラウマを消すために前世を遡っていく──。 SFだが、いわゆる「運命の2人」というテーマを中心にしていて、ある「怖しい出来事」を何度も行き来する。AIなどの最新技術も登場するが、基本ロマンチックな恋愛至上主義で、そこが萩尾望都を代表とする少女漫画を彷彿とさせる。 そしてそれに加え、現代に対する目配せがある。2014年のロサンゼルスでのルイはなんとインセル(非モテ)で、一度も女性との交際経験がない。「運命の2人」は悲劇的な最期を迎えるのか──観客は固唾を飲みながら画面を見つめるしかない。ガブリエルを演じたレア・セドゥも当然素晴らしいが、(インセル含めた)複雑なキャラクター、ルイを演じたジョージ・マッケイも特筆すべき。

25/4/23(水)

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