Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

サブスタンス

「観たことのないものをお見せします」というコピーにウソはなく、本当に観たことのないものを見せられてしまう。前半は、観たこともないような「美」、後半は、その逆の、とても文字にはできないもの。 ある「サブスタンス(物質)」が引き起こすホラー映画。そのサブスタンスは、服用すると、自分の分身ができるという薬品みたいなもの。そのサブスタンスが何でできており、どういう作用による現象なのかとか、それを作り提供しているのはどんな組織なのかとか、そういうことは何も明示されない。 ともかく、そのサブスタンスを使うと、「若いもうひとりの自分」ができる。 サブスタンスを使う主人公は、デミ・ムーア演じるかつてのトップ女優。彼女は一般人に比べれば顔も身体も美しいのだが、50歳になり、容姿の衰えを自覚せざるをえない。そこで、サブスタンスを使ってみると、若く美しいもうひとりの自分が現れる。この若いほうを、マーガレット・クアリーが演じる。2人1役である。 2人は同時には生きられず、どちらかが活動しているときは、もうひとりは意識を失って昏睡状態にある。そして7日ごとに入れ替わらなければならない。こういうルールがある場合、それが守れなくなる事態が起きるのが、娯楽映画のお約束で、予想通りになるのだが、やがて予想をはるかに超える展開に。 前半は、娯楽映画だけどルッキズムへの批判があるなんて考えてみていたが、後半の怒涛の展開で、そんなことはどうでもよくなってしまう。 デミ・ムーアとマーガレット・クアリーの関係は、疑似的な母娘でもある。父と息子もそうだが、子が親を抜こうとしたとき、親が抱く嫉妬と対抗心の物語でもある。 特殊メイクやVFXもすごいのだが、デミ・ムーアとマーガレット・クアリーの、昭和の映画評論用語でいう「体当たり演技」が、いろいろな意味ですごい。

25/4/19(土)

アプリで読む