広島・尾道の自然に囲まれて暮らす104歳の石井哲代さん。そのひとり暮らしの日々を描いた本作は、老後への不安がつきまとう現代に、温かな光を差し込むドキュメンタリーだ。ただ淡々と映し出される生活の積み重ねが、むしろ強く心に残る。 哲代さんは元小学校教員。83歳で夫を亡くして以来、自炊し、草をむしり、近所の人とお茶を楽しむ毎日を続けてきた。足が弱れば坂を後ろ向きで下る。忘れ物をしても「まあ、しょうがない」と笑う。その“しなやかな強さ”が、長く生きるためのヒントなのかもしれない。 「ひとり暮らしだけど、ひとりじゃない」。この言葉が印象的だ。姪やご近所とのつながりに支えられながら、自立と自由を保つ哲代さんの姿には、誰しもが憧れる人生のかたちがある。リリー・フランキーのナレーションも絶妙で、そっと寄り添うように観る者を導き、“どう生きるか”を優しく問いかける。

25/4/18(金)