朱川湊人による直木賞受賞作の短編を、前田哲監督が17年越しで映画化。関西の風景を背景に、家族の絆と喪失、そして再生を静かに描き出す。幼くして両親を亡くした兄妹。妹の結婚をきっかけに、彼女の中に眠っていた “他人の記憶”が再び目覚める。 映画では原作の終点だった子ども時代を乗り越え、大人になった兄妹の物語として再構築。血を越えた絆と、人生に潜む記憶の不思議を、優しく、そして誠実に描いている。主演の鈴木亮平と有村架純はともに関西出身。ほかにもオール関西キャストで固め、コテコテの関西弁の応酬も、作品に温度を与える。 舞台となる東大阪や彦根の街並み、昭和の香り漂う文化住宅などの美術も味わい深い。お好み焼き屋「みよし」での会話には、笑いと涙が同居し、どこか懐かしさを誘う。ベタな展開を分かりつつも、「誰かを想う気持ち」や「日常のぬくもり」が心にしみ、しっかりと泣かされてしまった。

25/4/25(金)