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春日 太一
映画史・時代劇研究家
異端者の家
25/4/25(金)
TOHOシネマズ 日比谷
ヒュー・グラントは近年、デビュー以来のハンサムなイメージを壊している。その貫禄や太々しさは往年の任侠映画の悪役俳優・安部徹を彷彿とさせるものがあり、その活動から一段と目が離せない。 本作はその最たるもの。布教のために自宅を訪ねてきたモルモン教の若いシスターふたりを監禁するサイコパスの役柄なのだが、これが見事にハマッていた。暴力は使わず、あくまで知力によってジックリと追い込んでいく様は、いかにもインテリジェンスあふれるヒュー・グラントにピッタリ。彼女たちも脱出に向けて絶えず頭をめぐらせるのだが、いつもその何歩も先を読んでさらなる絶望を味合わせる姿は実に厭らしい。 ただ、本作が素晴らしいのは、それだけではない。相手役のシスターを演じるソフィー・サッチャーとクロエ・イーストも決して当たり負けしていないのだ。そのため、必死に食い下がり、絶対に諦めることなく抗い続けるふたりのタフさがヒロイックにすら映し出されることに。 密閉空間を舞台に、主に三人のみで展開される物語だが、緻密に練られた演出と構成、そして俳優陣の名演技により、片時たりとも息のつけない緊迫感に満ちた作品になっている。
25/4/24(木)