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三枝 成彰
現代作曲家
小林沙羅 ソプラノ・リサイタル “愛を歌う”
25/5/14(水)
東京文化会館 小ホール
私も関わらせていただいている公演です。声楽家の小林沙羅さんによるソプラノ・リサイタル、“愛を歌う”です。小林沙羅さんは、いまや日本を代表するソプラノ歌手のひとりでいらっしゃいます。彼女とは2013年の私のオペラ『KAMIKAZE ―神風―』で初めてご一緒し、その後も2017年のオペラ・ブッファ『狂おしき真夏の一日』にもご出演いただきました。以来、私がもっとも信頼している歌い手であり、その歌声にはいつも感銘を受けています。 5月14日(水)に東京・上野公園の東京文化会館小ホールで行われるリサイタルでは、私が2023年に初演した合唱の連作曲「愛の手紙~恋文」より、〈伊藤野枝と大杉栄の往復書簡〉ならびに〈マリー・アントワネットとフェルセン伯爵の往復書簡〉を歌って下さいます。「愛の手紙~恋文」はもともと、私が団長をつとめる「六本木男声合唱団ZIG-ZAG」のために書き下ろした作品でした。川端やマリー・アントワネットをはじめ、モーツァルトやベートーヴェン、ワーグナー、ナポレオンや寺山修司といった偉人たちが書き遺した“恋文”の文言をもとに書いた連作で、そこから小林さんに選んでいただいた2曲をソプラノの独唱版に書き直し、今回、世界初演いたします。もとより男女のあいだで交わされた恋文ですので、小林さんの歌唱で聴くことができるのはありがたいことです。そしてこのコンサートでは俳優の北村有起哉さんによる朗読も披露されるとのこと。男声合唱で歌われるのとはまったく違った印象になるに違いありません。楽しみにしています。 コンサートは2部構成で、前半はロベルト・シューマンとクララ・シューマン夫妻の愛の世界を歌う楽曲の数々が演奏されます。ロベルトの作品からは「ミルテの花」より〈献呈〉や「リーダークライス」「子どものための歌のアルバム」、「女の愛と生涯」など、クララの作品からは「六つの歌」より〈私は暗い夢の中で〉〈二人は愛し合っていた〉〈愛の魔法〉を予定。後半は私の「愛の手紙~恋文」独唱版の世界初演になります。ピアノは国内外で多彩な活躍を続け、昨年デビュー20周年を迎えられた福間洸太朗さん。なんともぜいたくな顔ぶれになりました。
25/4/30(水)