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小劇場から大劇場まで、年間300本以上観劇。素晴らしい舞台に出会うため、気になる作品は何でも観ます。

森元 隆樹

演劇ジャーナリスト/プロデューサー/読売演劇大賞選考委員

avenir’e 8th create『音のない川』

本公演の初演は2023年4月30日〜 5月16日、会場は今回と同じ新宿眼科画廊・スペース地下であった。脚本は池内風。その前年、2022年9月に、池内が主宰する劇団「かわいいコンビニ店員飯田さん」は、池内の脚本・演出で『とりあって』(下北沢OFF・OFFシアター)という、セリフがキレッキレで、演出も全く隙の無い傑作を産み落としており、その池内が脚本を務めるavenir’e(アヴェニール)の旗揚げ公演『音のない川』にも、当然期待をして新宿眼科画廊の階段を降りて行った。 そのavenir’eのHPには、発足当時から、こう記されていた。 <<<>>> 創作における“4C” を守ります。 ① Community 関わるだれもが安心して出入りできるコミュニティであること ② Collaboration 互いをコラボレイトさせる創作であること ③ Creativity それぞれの持つ創造性を尊重し活かし合える場であること ④ Celebration 成果だけではなく創作過程も讃え合える場であること <<<>>> avenir’eはまず、家入健都・江藤みなみ・三浦葵に池内を加えた4名が集い、相談を重ね、その後オーディションを実施して、総勢13名のメンバーで立ち上げることになったという。その際、前述の“4C”を始めとする理念をコンセンサスとして、俳優も脚本家も演出家もドラマトゥルクも複数名が参加し、作品を作り上げていく道を選んだ。それゆえ、作品ごとにテイストが違うこともあり、一瞬その振り幅に驚かされることもあるが、舞台上から伝わってくる「集団として、必ずクオリティの高い作品を創り上げたい」という熱量は、どの作品においても、同じエネルギーで保たれていた。 先に記した『音のない川』初演時は、同じ設定ながら一部視線の位置を変えた「妹チーム」「姉チーム」の2チームによる公演であり、サブタイトルとして付けられた「日常の些細な一瞬は細やかにまばゆい」を丁寧に具現化していった舞台は、かなりの緊張感を伴った良質な作品であった。そして今回は「病院の空気~妹バージョン~」「病院の空気~姉バージョン~」「工場の空気」の3チームでの公演となる。物語の舞台となっている「とある病室」の窓から見える、川向うの風景に視線を置いた「工場の空気」は新作である。 初演時が旗揚げにして全21公演、そして今回が全33公演。さらに丸2年で通算8公演目と、上演のペースも早い。聞けばavenir’eは、出来る限り数多くの公演を実施し、しかも長い期間上演することで、俳優・脚本家・演出家・ドラマトゥルクなど作品に関わる全てのメンバーが、実戦によって更なる力を付けていくことも目指しているという。 その志を胸に上演される『音のない川』。今回も大いに期待しつつ、新宿眼科画廊の階段を降りたい。

25/4/26(土)

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