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日本映画の新たな才能にフォーカス
イソガイマサト
フリーライター
異端者の家
25/4/25(金)
TOHOシネマズ 日比谷
新しいタイプのサイコパスがまたまた誕生! ポスターやチラシには「A24✕『クワイエット・プレイス』の脚本家が仕掛ける、脱出サイコ・スリラー」というコピーが綴られていて、もちろんそれもそうなんだけど、本作の恐ろしいサプライズは『ラブ・アクチュアリー』『ノッティングヒルの恋人』などで知られるロマンティック・コメディの帝王=ヒュー・グラントが映画の鍵を握る謎の男リードを演じていることだ。 森の中の一軒家に住むリードは、ふたり組の若い女性モルモン宣教師を迎え入れ、神の教えを説く彼女たちと対峙。その優しそうな笑顔や柔らかな物腰はいつものヒュー・グラントのままだから、観ているこちら側も気を許してしまう。 しかも、リードは頭脳明晰で知識も豊富だから、経験の浅いヒロインたちと一緒に彼の言葉に耳を傾け、「どの宗教も真実とは思えない」という持論を展開する相手のペースに飲み込まれていくことになる。 すると、どうしたことか、それまでと同じヒュー・グラントの優しそうな笑顔と穏やかな物腰が途端に不気味でおぞましいものに見えてくるのだ。 けれど、それに気づいたときにはもう遅い。リードの術にハマった劇中のふたりと同じように、恐怖の深淵にただ突き落とされていくしかない。あたふたする彼女たちとは対照的に、リードはまったく慌てることなく、仮面のような笑顔で淡々と事を運んでいくから、恐怖がじわじわ増幅していく。 こんなサイコパスにヒュー・グラントを起用することを思いついた人の勝利かもしれない。最初から狂っているサイコパスと違い、笑顔が何を考えているのか分からないリードの闇をより深いものにしているのだから。彼の目的はいったい何なのか? 戦慄の結末は自分の目で見届けて欲しい。
25/4/26(土)