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文学、ジャズ…知的映画セレクション

高崎 俊夫

フリー編集者、映画評論家

マリリン・モンロー 私の愛しかた

ハリウッドが生んだ数多の伝説的なアイコンの中で未だに、“現役”であるのはマリリン・モンローだけである。〈マリリン・モンロー生誕99年記念〉と銘打たれて公開されるこのドキュメンタリーも、いずれは、モンロー神話を新たに補強する役割を果たすことになるであろうことは想像に難くない。 本作では、デビュー当時、恋愛関係にあったトニー・カーティス、バックダンサーとして参加していたジョージ・チャキリス、『紳士は金髪がお好き』(53年)で共演したジェーン・ラッセルらのインタビュー、そして無名時代の恋人、幼い頃に預けられていた里親の娘など近親者へのインタビューが入っているのが貴重である。 この映画のモチーフは、「彼女のキャリアをスタートさせたのはマフィアであり、彼女を終わらせたのもマフィアだった」というトニー・カーティスの言葉を立証することである。以前より、マリリン・モンローの死をめぐっては自殺、薬物の過剰摂取とさまざまな説が取り沙汰されてきたが、監督のイアン・エアーズは、はっきりとマフィアによる謀殺と断言している。 それにしても、さまざまな映像フッテージを眺めていると、マリリン・モンローという女優がまったく飽くことのない、尋常ならざる官能的な魅力を放っていることに驚かされる。 モンローのハマリ役といえば、衆目の一致するところ、『お熱いのがお好き』(59年)に代表される、ちょっとオツムが弱い、愛嬌たっぷりなコメディエンヌだろう。だが、私はモンローの至高の一本を選ぶとすれば遺作となった『荒馬と女』(61年)を挙げたい。奇矯なまでの動物愛を信奉するあのヒロインにこそ、マリリン・モンローという女優の本質が宿っていたとしか思えない。監督が『アスファルト・ジャングル』(50年)で彼女を見出したミソジニスト、ジョン・ヒューストンであったということも興味深い。

25/5/2(金)

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