ルカ・グァダニーノ監督の新作。バロウズの小説の中で読みやすい『クィア』だが、その世界は豊潤な表現がイメージを喚起させつつ、それは比喩であってリアルともまた違う。クローネンバーグはイメージに忠実に従って、『裸のランチ』というぐちゃぐちゃな素晴らしい迷宮世界を作り上げた。本作はそれに対して比喩は切り捨てて表層に徹した映画だ。本作はゲイではない男性に恋したゲイの、切なさの映画に麻薬で味付けした作品である。意外な清潔感があって、端正さが心地良かった。大胆なセックスシーンはエロティックだが、不潔ではない。ダニエル・クレイグがニュー・オーダーの『Leave Me Alone』がかかるなか、煙草を吸いながら、恋をした青年を思っている長回しのシーンが切なく美しい。

25/5/1(木)