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水先案内人のおすすめ

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夏目 深雪

著述・編集業

秋が来るとき

フランソワ・オゾンの新作。前作『私がやりました』はスクリューボール・コメディ的ミステリーと、撮るジャンルが広がっているように見えるオゾンの新作は、80歳のミシェルが村で一人暮らしをする姿を描く。珍しく老女が静かに人生を終える姿を描くのかと思いきや、やはり不穏な事件が色々と起こるのだった。 たまにパリから孫を連れて遊びに来る娘との関係が複雑そうに見えるが、案の定取り返しのつかない事件が起きる。狭い村で起こる事件ということで、アラン・ギロディの新作『ミゼリコルディア』との類似も感じたりするが、同じフランスのオープンリーゲイ(年齢も近い)の作家としては、オゾンの方が(もちろん同性愛もテーマとするが)女性をきちんと撮影対象にするという印象がある。辛辣な視線とともにシニカルに描く場合も多いのだが、今作はミシェルの過去に関する描写など、フェミニズム的視点が感じられた。 オゾンは高齢化に伴う課題とミステリーを組み合わせたかったということで、メロドラマに陥りがちな題材を、これだけ不穏に描けるのはオゾンならではだろう。しかも明確な真実は明かされず、観客は余韻の中で様々な、自分だけの解釈を噛みしめる。

25/5/9(金)

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