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夏目 深雪
著述・編集業
犬の裁判
25/5/30(金)
シネスイッチ銀座
仏の女優レティシア・ドッシュの初監督作品。『若い女』で鮮烈なコメディエンヌぶりを披露し、『シンプルな情熱』では赤裸々な性描写にもチャレンジしたドッシュ。だが、映画は初めてなものの、馬と共演する演劇の監督を務めたり、ラジオのエコロジー番組を制作したりと、仏ではマルチな活躍ぶりとのこと。 本作も、食事中に触られて女性に噛みついてしまい、司法により殺されてしまう犬・コスモスを弁護する弁護士・アヴリルを自ら演じ、エネルギッシュかつユーモラスな、独特な世界観を創りあげている。 いわゆる動物愛に溢れた「動物もの」はどんな映画か想像がついてしまうものが多いが、ドッシュ演じるアヴリルは動物好きというよりはエコ寄りの思想を持った弁護士として描かれている。途中で動物愛とフェミニズムが衝突したり、一貫して知的でブラック。ドッシュはもちろんカンヌでパルム・ドッグを受賞した犬・コディ(サーカス犬だそう)の演技も抱腹絶倒。今時の思想の流れを汲みながら風刺し、しかも身体性を生かしたブラックコメディという新境地を切り開いた。
25/5/11(日)